昨年、高齢者施設に入所したAさんから、元の住居を手放したいと言われたのは今年の5月初旬だっただろうか。
今回の内容はボツにしようかと思いつつ何回も書き直し、結局ダラダラとした内容で発信することにした。
(Aさん宅に咲いていた花を見ながら。~花の名は間違えていることも有ります)
Aさんは身体障害で生活保護受給者。
数十年前に離婚し自宅での独居生活であった。
若かりし頃にお世話になって恩義があると、91歳の婦人が時たま来ては庭の整備や日常の手伝いをしていた。
シモツケソウ
生活困窮者の子供が、親の経済的支援が出来ない旨の意思表示をすると、自宅があっても生活保護を受給できる。
その受給者が死亡した場合、経済的支援をしなかった子供であってもその不動産の相続権がある。
親の支援をしない子供に財産を渡さず、行政が受けるべきとの法改正の動きが15年ほど前にあったが、まだ決まってはいないようだ(未確認)。
不動産価値が高い都会のことはわからないが、
子供に相続権を放棄された固定資産の対処に苦慮する町村にとって、都道府県なりが資産を没収してくれた方がありがたいのだが。
ウツギ
その婦人が昨年交通事故で亡くなり、
Aは施設入所となったのだが、自宅での生活に戻りたい未練があり、住宅を手放す気も起きなかったようだ。
機会があれば自宅を見に来ていたが、
婦人が丹精込めた庭が荒れていく姿を見て、庭を守りたいとの心情から住宅を手放す気になったようだ。
(婦人は小さな花が好きだったので、写真も小さな花を中心に掲載)
シレネ?
120坪の土地に2階建延べ40坪ほどの家と車3台の駐車場スペース以外は広い庭。
家は築50年以上で下水道が未完備、屋根や外壁の修理も必要な状況。
庭を守ることも含めると売買条件は厳しい。
ラバテラ?
公共の下水道には『下水道』と『(農業)集落排水』がある。
都市計画法で定められた都市計画区域内では『下水道』が完備されていて、雑排水は下水道に流すことが強制されている。
(トイレは強制ではないが、水洗化するのが通常)
人口が少ない集落では、都市計画が無い、あるいは都市計画区域外のため、『集落排水』で代用される。
『集落排水』は個々の設置に強制力がないので、
集落排水(下水道)を使わず、トイレも汲み取り式の家もある。
住人が不在になると廃屋となり、墓も朽ちていくことが多いのが田舎の現状。
親が残した住宅を必要としない子供にとって、住宅解体費や固定資産税の支払いはきつい。
土地・建物に家財一切を無料で引き取ってほしいと言うのが本音。
(その資産を無料で手に入れると、受け手に贈与税がかかり高上りになることもある。)
築30年以内で定期的にリフォームされていれば、土地付きで1,000万円以上の売買事例はあるのだが。
Aのような古い固定資産の一般的売買の状況は、
土地代(評価額相当)-住宅解体費用=売買価格
(購入者がその住宅に住んだとしても)
買主がこの基本額に、
庭などを価値あるものとして売買価格に加算するか、
逆に樹木の伐採や整地の費用などを減額するか。
家財などの価値を加算するか、廃棄処分経費として減額するかなどが交渉となる。
6月中旬、 ようやく買主が見つかり、
友人である司法書士の指導を受け、道の生保担当者に連絡しながら、Aの代理人的立場で交渉を進めた。
生活保護は市がその決定権と保護費用を負担するので、
A市で保護対象にならない人が、B市で保護対象になることも有る。
町村の場合はこれら一切を都道府県が行うのが基本。
踊子草
時折面倒を見ている身内は遠くに住み、この類の知識も無い。
住居を手放す、施設に入所するなどの大きな決断の時は、身内の他に、信頼関係のある第三者が寄り添うことが望ましい。 ~ 私の持論
わがままな性格のAに身内が対応しかねるだろうと考え、Aを知る私が引き受けた。
具体的な交渉・手続きを進めていくと、
予想通り、Aはいろいろと未練が出てきて、会うたびに思い出話を言い続ける。
私は彼の心境を察しながら相槌を打つだけしかできない。
フウロ草
そして、思いつくままに細かな要望を言う。
○○をBに、○○をCに・・・と、
お世話になった人たちに何かをお返ししたい気持ちで、財産別けのように言うが、
ほとんどが必要としない物で、相手にとっては有難迷惑な品々。
知床イワヒゲ
一方、事務手続きでは権利書が見つからず、印鑑登録もなく、各種の住所変更手続きもしていなくて、Aの身分証明になるものもない。
そんな売買契約以前の手続きで、あっちこっち動き回り手間取ってしまった。
それでも、一つ一つ本人と身内に了解を得ながら、7月下旬にようやく売買の全てを終えたのだが、
疲れる長い長い日々であった。
ちなみに、売買収入があったのだから当然に保護は停止され、
国民健康保険の対象になり、減額されていた施設の負担なども通常の額となる。
その金を使い切れば生活保護は復活するのだが、
その時また事務手続きで動かなければならないのだろう。
ボンバナ
金が無いから施設入所できないと悩んでいる方が多いようで、時には自殺する場合もあるようだ。
施設が示す本人負担額は、それなりの所得がある人を対象とした基準額であって、
介護度と所得により負担額は異なる。
その最低基準の負担額も払えなければ、生活保護で対応できる。
法には但し書き(特例)が多いので、概要表現の本文は参考程度にとらえ、
具体的に知りたいことがあれば、行政の担当者や司法書士などの専門家に相談しながら進めていただきたい。
いずれにしても、一人悩まずに。
知らない者とわからない者で相談することは、
時間の無駄であり、時には間違った解釈で悲惨な結果を招くことも有るのでご注意を。