母が他界して12年になる。
その数年前から旅館業は廃業していた。
さらにその数年前から客を選ぶようになっていた。
・・・常連さんと紹介があったとき、自分の気分に合わせて受け入れていた。
そのころから、寝具やお膳などの家財を、希望者に引き受けてもらっていた。
引き取られそうもない物を壊して廃棄して母に怒られた。
また廃棄し怒られた。
これを繰り返しているうちに、兄となぐさめ役を交代にした。
母は「私が死んだらみんな捨てられるんだね」と口癖のように言っていた。
寝具・お膳・食器・調理道具・テーブル・椅子・テレビ・ストーブ・置物・・・・
大量の備品すべてを多くの人に受けてもらえた。
家を貸している期間もあるが、ようやくすべてが処理できた。
受けてくれた人の多くは、母や私の知人と生活に困っている人。
母の言葉でいやいやしたが再利用されることは嬉しいことだ。
雪解けには取り壊すことになった。
まだ使えると人は言うが、私ができるうちに処分しなければならない。
写真は取り壊される家の一部。
厚い雲の夕陽